腫瘍

神戸大学医学部整形外科 Kobe University Orthopaedic Surgery

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黒田良祐 教授 Prof. Ryosuke Kuroda

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腫瘍

  保健学科教授
秋末 敏宏
(平成4年卒)
●日本整形外科学会専門医
●日本がん治療認定医機構暫定教育医
●日本がん治療認定医機構がん治療認定医
●日本整形外科学会運動器
  リハビリテーション医
●日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
  国際がん医療・研究センター特命講師
河本 旭哉
(平成10年卒)    
●日本整形外科学会専門医
●日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
●Immediate Care In Sports (ICIS) Level 3

  助教
原 仁美
(平成12年卒)
●日本整形外科学会専門医
●日本がん治療認定医機構
  がん治療認定医
●日本リハビリテーション医学会専門医
    医員
深瀬 直政
(平成15年卒)
●日本整形外科学会専門医

腫瘍グループは、骨軟部腫瘍、つまり骨や軟部(四肢、頭頚部以外の体幹など)に発生した腫瘍の診断・治療を行っています。骨軟部腫瘍は、おおまかに分類すると骨に発生する骨腫瘍と、筋肉、神経、血管、脂肪などの軟部組織に発生する軟部腫瘍に分類され、それぞれ悪性骨腫瘍、良性骨腫瘍、悪性軟部腫瘍、良性軟部腫瘍に分けられます。骨軟部腫瘍は、内臓(胃、肺など)に発生する腫瘍と比べて、発生頻度が少なく、また、組織学的な分類が複雑、多岐に及ぶため、診断・治療が困難な場合が多く、専門施設での診断、治療が不可欠な疾患です。当科では、経験豊富な放射線科医および病理医、また小児の悪性疾患に対しては小児科医の協力を得て、数多くの骨軟部腫瘍の診断、治療に携わっております。年間の手術件数は平均150例で、そのうち悪性骨軟部腫瘍は約30例です。

     
▲腫瘍手術   ▲腫瘍用人工関節のレントゲン    

骨軟部腫瘍は、先に述べたように種類が多く、その治療も画一的なものではありませんが、主な疾患に対する当科で行っている治療法をご紹介いたします。

(1) 原発性悪性骨腫瘍
原発性悪性骨腫瘍の代表は骨肉腫で、全国で年間200人前後が新たに罹患すると推定されています。抗がん剤による化学療法の開発により生存率が飛躍的に改善した疾患でありますので、当科でも組織検査で診断が確定し次第、基本的に、原発巣の手術を行う前に、化学療法(術前化学療法)を数ヶ月間行います。15歳以下の小児に対しては、小児科で化学療法を行っていただいております。従来、化学療法は吐き気などの副作用が強く、つらい治療でありましたが、近年は、副作用を軽減するいろいろな薬の開発により、患者様の苦痛を緩和するように図られております。術前化学療法終了後、手術を行います。化学療法が確立される以前は、四肢発生の場合なら切断に至ることが多かったのですが、近年は、患肢を温存する手術法が一般的となってきました。例えば、関節の近くに腫瘍がある場合、腫瘍を切除した後、腫瘍用人工関節を使用して再建する場合がほとんどです。成長期の小児に対しては、後に人工関節を延ばせる機能を持った人工関節で再建します。また、腫瘍が関節から離れた場所に発生している場合や、上肢の骨に発生している場合は、腫瘍を切除後、術中に放射線を照射し、腫瘍を死滅させてから、骨を体内に戻す方法(術中体外照射)を選択することもあります。術後、手術の傷口が落ち着けば、術後化学療法と平行してリハビリを行い、再発、転移の予防、患肢機能の改善を図ります。骨肉腫以外の原発性悪性骨腫瘍としては、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、脊索腫などがあります。それぞれの病気で治療方法や予後が大きく異なるため、治療に当たっては、正確な診断に基づいた適切な治療を選ぶことが非常に重要です。

(2) 転移性骨腫瘍(骨転移)
現在、がんの罹患率は年間50万人を超えるようになり、一生のうちにがんに罹患するのは2人に1人と言われるほどに増加しております。また、近年分子標的治療薬など新しいカテゴリーの治療薬の開発によりがんの生存率が向上した結果、担がん状態で長期生存することが可能になってきております。それに伴い骨転移に対して当科で手術する件数も増加してきております。当科では転移性骨腫瘍に対しても、原発治療科と十分に相談の上、適応があれば積極的に手術を行っております。四肢発生骨転移の場合、QOL維持のため早期の離床や荷重歩行ができる術式の選択が望ましく、大腿骨近位部ではCHSタイプのプレートや髄内釘使用による骨接合術、通常型人工骨頭、腫瘍用人工骨頭を使用した骨格再建術を行っております。骨幹部では髄内釘、遠位部では髄内釘、プレート、腫瘍用人工膝関節などが選択されます。さらに腫瘍の掻爬や切除、骨セメント充填の要否を症例に応じて検討して術式を決定しております。がん治療は単科で担うことは不可能で、緩和ケアまで含めて総合的に連携して治療を行う事が必要です。近年、他科との連携を深めるべくtumor boardの必要性が求められておりますが、当科でも積極的に院内tumor boardに参加し他科と討論を重ね、患者様一人一人の問題点を抽出することにより、最適の治療が提供できるよう心がけております。

(3) 悪性軟部腫瘍
悪性軟部腫瘍は、悪性骨腫瘍以上に種類が多彩です。化学療法の有効性が証明されている軟部腫瘍もありますが、主になる治療は手術での腫瘍摘出です。組織診断や症例に応じて、術前や術後に化学療法や放射線療法を組み合わせます。手術は、広範囲切除と呼ばれる切除方法を行います。広範囲切除とは、腫瘍そのものだけを摘出するのではなく、周囲の正常な組織に包んで腫瘍を摘出する方法です。このような摘出方法を行う理由は、悪性軟部腫瘍の場合、腫瘍そのものだけを摘出すると再発する可能性が高いためです。当科では可能な限り患肢温存、機能温存を目指した治療を行っており、術前の画像検査にて腫瘍が重要な血管・神経に接している場合にはIn Situ Preparation (ISP)法を併用して安全な切除縁を確保する試みを行っております。また広範囲切除によって、大きな皮膚や筋肉の欠損が生じる場合がありますが、その際は、形成外科医の協力を得て、皮膚移植や顕微鏡視下手術で血管縫合を伴うような皮弁手術(皮膚と筋肉を栄養血管付きで移植する手術)を同時に行うことがあります。

(4)良性骨腫瘍
良性骨腫瘍に対しては、腫瘍の切除または掻爬(骨内から腫瘍を掻き出し摘出)を行います。腫瘍を切除した部分には、骨の欠損が生じる場合があります。以前は、欠損部に患者様の骨盤骨を一部採取し、移植したり、他人の凍結骨を使用したりしていましたが、患者様に対する侵襲やウイルス感染の危険性もあり、最近は人工骨(カルシウム製材)を欠損部に移植し、良好な骨の再生を得られています。

(5)良性軟部腫瘍

良性軟部腫瘍に対しては、悪性軟部腫瘍と異なり、腫瘍そのものだけを摘出する方法(辺縁切除)で腫瘍を摘出します。良性軟部腫瘍であっても再発の可能性はありますので、術後も外来にて充分な経過観察を行っています。

(6)新しい診断法・治療法
当科および関連施設で行われている新しい診断・治療法を紹介いたします。診断法としては、従来の病理組織診断に加えて、いくつかの骨軟部腫瘍で遺伝子の異常から診断できる場合があり、現時点ではあくまでも補助診断ではありますが、当科でも腫瘍組織の遺伝子診断を行っています。また新しい治療法として粒子線治療が脚光を浴びています。粒子線治療には陽子線治療と重粒子線治療がありますが、平成28年4月より小児固形がんに対する陽子線治療と切除非適応の骨軟部腫瘍に対する重粒子線治療に公的医療保険が適応されることになりました。粒子線治療は当院では行っていませんが、陽子線治療と重粒子線治療の両方が行える世界初の施設である兵庫県立粒子線医療センター(兵庫県たつの市)の協力を得て、当科の患者様も粒子線治療を受けられています。骨盤の深部に発生した悪性骨腫瘍など手術が困難な場合に治療の対象となりますが、その適応には専門医による総合的な判断を要します。
腫瘍外来は、水曜日午前が初診となっております。ほとんどの患者様が、他の病院から御紹介いただく患者様です。御紹介いただく場合は、紹介医師からの紹介状と検査結果をご持参いただくようお願いいたします。再診は、水曜と金曜の午後に行っています。当科で治療を受けていただいた患者様の経過観察を行っています。
最後に、骨軟部腫瘍は発生頻度の低い腫瘍であり、特に悪性腫瘍については専門的な診断・治療を、整形外科以外の診療科の協力も得て、迅速に進める必要があります。我々は、骨軟部腫瘍の診断・治療の充分な経験を持っており、また、大学病院であるメリットとして、各診療科の専門医師からの協力も得られ、集学的な治療を行うことが可能であります。今後も、骨軟部腫瘍の患者様によりよい診断・治療を提供できるよう日々努力してまいります。

 
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